今回はカナダの子供家庭庁でソーシャルワーカーとして働いていたときに出会ったLさんのお話をします。
当時Lは40歳ぐらい、小さい頃から虐待され複雑な環境に育ち、若い頃からドラッグや売春をして、とても荒れた人生を送っていました。3人の子供がいましたが、ティーンエイジャーの息子2人はイタリア人の父親と暮らしていました。彼は高い塀に囲まれた豪邸に住み、ドラッグの売人をしていたので、マフィアかもしれないとの噂がありました。一番下の娘はまだ2歳ぐらいで、重い障害を抱えて生まれてきました。娘は愛深い里親にとても大切に育てられていました。
Lは常に様々なトラブルに巻き込まれ、人に利用され踏みにじられていました。ドラッグの運び屋をして警察に捕まった、ドラッグの過剰摂取で病院に運ばれた、お金を盗まれた、ボーイフレンドのDVなど。長年のドラッグ使用でLは身も心もボロボロでした。それでもLは娘の親権を取り戻すための訴訟を起こしました。今まで様々な問題を抱えた親と関わってきたけれど、その中でもLは特に悲惨で、とても子供を育てることなどできない状態、彼女が親権を取り戻す可能性はほぼありませんでした。
Lは私の所属していたオフィスの担当地域外に住んでいたのですが、なぜか私が彼女の担当になりました。というより、誰も彼女を担当したくなく、私に押しつけられた感じでした。Lは遠くに住んでいたので、私は家庭訪問を一度しかしませんでしたが、トラブルに巻き込まれる度に、Lは頻繁に泣きながら電話をしてきました。裁判について弁護士たちと打ち合わせをした時には、ミニスカートに破れたストッキング、見るからに売春婦という姿で現われました。
ボロボロのL、でも彼女にはなぜか可愛らしい、純粋さがありました。頻繁に私に電話してくるL、きっと他に話しを聴いてくれる人がいなかったのでしょう。あるとき私は「あなたのアパートに天使の絵と素敵なキャンドルが置いてあったね。何か信じているの?」と訊きました。Lはすこし恥ずかしそうに「あんただけには教えてあげるよ。実は私、毎日日記を書くの。いつも”Dear God”って最初に書くんだ。」それを聞いて、なぜLにまだ煌めきがあるのか分かりました。こんなに悲惨な人生を歩んでいるのに、毎日日記を通じて神さまに心を開き語りかけるL。彼女の深い信仰と美しさに感動しました。それ以来、Lが電話をかけてくる度に、私たちは神さまや信仰などについて語り合いました。
暫くして私が退職することをLに伝えると、彼女は「あんたのことはいつも私のハートに大切にしまっておくよ」と言ってくれました。
煌めきを失わず、信仰の美しさを教えてくれたL、そしてLに巡り合わせてくれた神さまに深く感謝しています。
神さまに見守られ、Lがこの生涯を無事に全うできますように!
Hagley Park in Christchurch