20年以上前のこと、カナダで水泳チームに所属していました。コーチのTomは熱心に私たちを指導してくれ、音楽に合わせてトレーニングしました。短距離を早く泳ぐ時はアップビートな早い曲。長距離はゆっくりの曲。そして時にはmystery swimと言って、プールの電気を消しTomが笛を吹くまで泳ぐ。何メートル、何分泳ぐのかわからないけれど、暗闇におしゃれなジャズが流れる中で泳ぎました。
チームの中で一番早かったのはGlen. 長身でスリムな彼は、優雅にまるでのんびりしているように泳いでいるのに、美しい勢いで水の中を進みました。ある日私はTomに「私もGlenのように泳ぎたい!」と言いました。Tomは「君にはその体格がないんだよ。君はとても一生懸命トレーニングに励む良いアスリートだ。でも、I want you to dance in the water!」 水の中で踊る? どういう意味かわからなかったけれど、とても大切なメッセージが、彼を通じて私に伝えられたという感覚がありました。
日本人の勤勉さと真面目さ、それに性格的なものもあり、誰かペースをとってくれる人がいると合わせるけれど、私は自分一人だと常にがむしゃらに突っ走っていました。子供の頃は、友達と一緒だと普通に歩けるのですが、1人になるといつも走っていたので、マラソンは得意でした。
Mata Yoganandajiは自分自身をマスターすることの大切さを語っています。「想像してみましょう - あなたは美しい船です... 人生を軌道に乗って航海しています。 私たちは自分の船(マインドとボディ)のマスターでなければなりません。いつ帆をいっぱいに張ってより速く進み、またゆっくりとしたペースで進むためにいつ帆を下げるかを知ることです」(『純粋瞑想で自己を悟る』より)。純粋瞑想とそこで授かった呼吸法などを日々使うことで、だんだん自分のエネルギーのバランスを保ち、人生のリズムを感じ取れるようになっきました。
人生には流れとリズムがあり、早い時もゆっくりの時もある。それに合わせてダンスするように生きる。Tomが私に教えようとしてくれたDance in the waterの意味がわかってきたのはここ数年でしょうか。いつも必死になって突き進む必要はなく、そうするべきでもないこと。
チーム全員で水泳大会に参加したことがあります。私は種目別のリストを見て自分のレース時間を確認しました。チームメイトの応援もしたいので、リストを見ていると、なんと50mバタフライに私の名前がありました。慌ててTomに「これ間違ってる、私50mバタフライなんて申し込んでない!」というと、彼はニタニタして「俺が勝手に申し込んだんだよ。君のバタフライ、いい感じじゃん。まあ頑張れよ!」。
今でも毎週泳いでいます。昔は目一杯のエネルギーで苦しみながらバタフライを泳いでいましたが、今はリラックスするととてもラクに泳げることに気づきました。そして泳ぎの最後は、水に自分を委ねて、水に動かされるまま、リラックスします。まさに“Dance in the water”. 水泳を通じてとても大切なことを教えてくれたTomに感謝しています。